バッハ・コレギウム・ジャパン 第167回 定期演奏会 ミサ曲 ロ短調 BWV232

 バッハ・コレギウム・ジャパン 第167回 定期演奏会。設立35周年記念として、ミサ曲 ロ短調 BWV232。今回は鈴木優人の指揮である。ここ最近、鈴木優人の活躍、成長ぶりは著しい。今回のコンサートでも伝わった。

 今回のコンサートマスターは寺神戸亮、第5曲「ラウダムス・テ」のヴァイオリン・ソロが見事だった。北とぴあ国際音楽祭でのオペラ上演でも弾きふりを見せたことがある。ソリストでは森麻季の見事な歌唱が光った。テノール、吉田志門の成長ぶりが素晴らしい。「ベネディクトゥス」の素晴らしさが忘れられない。クリスティアン・イムラーの力強く、説得力豊かな歌唱も忘れ難い。櫻井愛子、テリー・ウェイも好演だった。

 バッハの総決算というべき大作、キリエ・グローリアは、ザクセン選帝侯国宮廷作曲家の称号を得るため、ドレースデンの宮廷に献呈した。トーマス教会付属学校長、ヨハン・アウグスト・エルネスティとの争いが表面化したため、宮廷作曲家の称号を得て、ライプツィッヒでの立場を改善しようとしたことによる。サンクトゥスが1724年に完成していたとはいえ、キリエ・グローリアのみとしたことには、全曲をまとめ上げる意図があったかもしれない。バッハとエルネスティとの争いについて、6月8日、日本キリスト改革派 東京恩寵教会で行われた鈴木雅明の講演会で言及した方がよかっただろう。

 鈴木優人の成長ぶり、ソリストでの吉田志門の成長ぶりを見ることができたことは一つの成果だった。