ダニエル・バレンボイムが2012年、70歳記念コンサートとして、ズービン・メータ、ベルリン・シュターツカペレと共演したチャイコフスキー ピアノ協奏曲 第1番 Op.23。1991年、セルジュ・チェリビダッケ、ミュンヒェン・フィルハーモニー管弦楽団との共演は勢いがあった。この時は、59歳。円熟した音楽家としての味わい深い演奏となった。
第1楽章の序奏部の豪華絢爛さがひけらかしとはならず、音楽として味わい深くなっている。主部、ロシアの泥臭さ、抒情性豊かな部分との対比の中に、豊かなピアノの音色がじっくり聴かせていく。第2楽章には、ロシアの大地の匂いが漂い、歌心に溢れた名演である。ピアノの音色もさすがである。第3楽章も自然に流れる。これ見よがしではない。ロシアの祭りの光景が目に見える。
この協奏曲を初演したハンス・フォン・ビューローは、ヴァーグナー、ブラームスとの親交があった。後年、ブラームスの作品を取り上げるようになった。当初、ブラームスに否定的だったチャイコフスキーが、ハンブルクで交響曲 第5番 Op.64がハンブルクで上演された折、ブラームスが聴きに来て、評価してくれたことを喜んでいた。ブラームスが自作を聴いて、評価したことに、チャイコフスキーの喜びは大きかっただろう。その意味でも、ビューローは、チャイコフスキーとブラームスの橋渡しとなったかもしれない。
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