岡村喬生氏逝去

 日本オペラ界の牽引車となった岡村喬生氏が89歳で亡くなった。早稲田大学グリークラブに所属したことから、オペラ歌手への道を進み、ローマ、サンタ・ツェツィーリア音楽院に留学、二期会の花形歌手として活躍した。また、大橋国一と共にドイツ、ケルン歌劇場専属歌手となり、ヨーロッパのオペラハウスで活躍、二期会のオペラ公演をはじめ、ベートーヴェン、交響曲第9番のソリストをはじめ、シューベルト、歌曲集「冬の旅」D.911に取り組んで来た。

 氏の著作では、代表作「ヒゲのオタマジャクシ 世界を泳ぐ」、「歌うオタマジャクシ 世界奮泳記」、「オペラの時代に」がある。とりわけ、「オペラの時代に 歴史と名作を楽しむ」ではオペラ歌手としてのキャリアを積む中で、バロックから20世紀のオペラに至るオペラの名作を開設しながら、悲喜こもごもの人間ドラマを刻みつつ、作品を解説していったオペラ入門書で、一読の価値がある。オペラ歌手による名解説書としてもすぐれた往作である。ぜひ再販してほしい一冊である。

 また、1973年、イスラエル、テルアビブの海岸で遊泳中に亡くなったハンガリーの名指揮者イシュトヴァーン・ケルテーシュのことにも触れた「ヒゲのオタマジャクシ 世界を泳ぐ」など、岡村の著作にはいろいろ教示されることが少なくない。その意味でも、音楽界の貴重な証言を集めた著作も後世に残してほしい。

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コメント: 2
  • #1

    榮子 池田 (土曜日, 09 1月 2021 22:26)

    あのビロードの様なお声が聞けないのは残念です。お人柄も素晴らしい方でした。ご冥福をお祈りいたします。

  • #2

    畑山千恵子 (月曜日, 11 1月 2021 19:11)

    「オペラの時代に」は再刊してほしいものです。