アルンフリート・エードラー シューマンとその時代

 池上純一・三宅幸夫・三光長治監修による西村書店、大作曲家とその時代シリーズは、池上純一・三宅幸夫・三光長治監修により、アルンフリート・エードラー、山崎太郎訳による「シューマンとその時代」が出た。

 日本におけるシューマンものは、原田光子「真実なる女性 クララ・シューマン」、若林健吉「シューマン 愛と苦悩の生涯」、前田昭雄「シューマニアーナ」、藤本一子「シューマン」が出ている。かつてはマルセル・ブリオン「シューマンとロマン主義の時代」、アラン・ウォーカー「シューマン」もあった。これは最新のシューマンものとしては優れた文献と言えよう。

 山崎自身、原書第2版で訳出したものの、第3版が出た際、新しいシューマン研究の成果を生かしたもので、内容も深み・厚みがあると評価している。これは頷ける。

 シューマンがクラーラとの結婚で、男性としての劣等感にさいなまれていた。それが、指揮者への道に繋がり、デュッセルドルフの音楽監督に就任するも挫折する。また、クラーラへの嫉妬にもなる。作曲家としていられるのがクラーラのおかげと言われ、傷心する。自立する女性として歩むクラーラが面白くない。自己の自立のためにもしっかりした職に就かんとする思いが強かったことも頷ける。

 その上で、シューマンの作品を概観すると、ピアノ作品・声楽作品への新たな視点に繋がる。また、交響曲・管弦楽曲・協奏曲・室内楽曲への再評価にもなる。シューマンが19世紀ロマン主義音楽での役割も新たな視点が出るだろう。

 また、シューマンが近視・高血圧を患ったことも明らかになった。近視だったことが、かえってシューマンが内向的になったことも大きい。高血圧だったことが、精神病院などへの恐怖感を植え付けたことは当然だろう。また、シューマンが梅毒に感染したことへの裏付けもあった。その意味でもこの書は大きな役割を果たしている。

 これだけの大著が丹念な訳で出たことを大いに喜びたい。

 

(山崎太郎訳 西村書店 4800円+税)