渡邉康雄 ベート―ヴェンピアノ協奏曲の世界

 渡邉康雄がオーケストラ・アンサンブル金沢との弾き振りで、ベートーヴェン、ピアノ協奏曲2曲、第1番、Op.15、第5番、Op.73「皇帝」を取り上げた。(紀尾井ホール)

 指揮者、渡辺暁雄の長男として作曲を学び、アメリカ留学でピアノに転向、長年にわたってくらしき作陽大学で後進の育成に当たってきたせいか、東京でのコンサート活動から遠ざかっていた。今、70歳にならんとしてベート―ヴェンのピアノ協奏曲弾き振りに挑戦する意欲は素晴らしい。

 第1番では若きベートーヴェンの覇気が伝わり、じっくりと聴かせる演奏だった。第1楽章のはつらつさ、第2楽章の歌心は聴きものだった。第3楽章でもベート―ヴェンの機知にとんだユーモアをたっぷりと味わうことができた。

 第5番「皇帝」は円熟味あふれる演奏で、ベートーヴェンがピアノとオーケストラを対等に扱い、交響曲的な深い内容の作品へと到達したことを示していた。第1楽章、第3楽章の豪快さはむろんのこと、第2楽章の深い味わいに満ちた歌は素晴らしい。

 アンコールはサン=サーンス、ピアノ協奏曲第5番、Op.105「エジプト風」第3楽章。これも内容豊かなであった。今後、ベートーヴェンでは第2番、第3番、第4番を取り上げるだろう。楽しみである。