アンジェラ・ヒューイット バッハ・オデッセイ 8

 カナダのピアニスト、アンジェラ・ヒューイットのバッハ・オデッセイ、第8回はトッカータ全7曲、BWV911,BWV916,BWV910,BWV914,BWV913,BWV915,BWV912、半音階的幻想曲とフーガ、BWV903であった。(13日 紀尾井ホール)

 若きバッハの野心、名技性溢れるトッカータであっても、音楽的な深さが要求される。ディートリッヒ・ブクステフーデ(1637-1707)の演奏を聴かんとしてリューベックへ赴き、その音楽の深さに圧倒されたとはいえ、バッハの音楽作りに大きな成果をもたらした。それゆえ、アルンシュタットではバッハの音楽への戸惑いもあった。リューベック滞在が長引いたこともあってか、ミュールハウゼンに移ることとなった。

 ヒューイットの演奏から、若きバッハの姿を聴き取ることができた。音楽的な深さも忘れていない。素晴らしい一時だった。

 半音階的幻想曲とフーガは、ケーテン時代に着手したとはいえ、ライプツィッヒで今の姿になった。名技性と音楽性が調和した名作で、大聖堂の壮大さが目に見えてくる。ヒューイットも壮大さ、深さを併せ持ったものを聴かせた。

 アンコールはカプリツィオ「最愛の兄の旅たちに」BWV992からを演奏、深い余韻を残した。10月のイギリス組曲が楽しみである。