ユーディ・メニューイン、ヴィルヘルム・ケンプ ベート―ヴェン ヴァイオリン・ソナタ Op.47「クロイツェル」 Op.96 「フィガロの結婚」の主題によるピアノとヴァイオリンのための12の変奏曲 WoO.40

 ユーディ・メニューイン、ヴィルヘルム・ケンプによるベートーヴェン、ヴァイオリン・ソナタも大詰め。Op.47「クロイツェル」、Op.96、モーツァルト「フィガロの結婚」の主題による12の変奏曲、WoO.40である。

 Op.47はアフリカ系の血を引くヴァイオリニスト、ジョージ・ブリッジタワー(1778-1860)のために作曲、後にルドルフ・クロイツェル(1766-1831)へ献呈、この名で知られる。第1楽章。メニューイン、ケンプが互いに火花を散らし、白熱した演奏となっている。聴き手も引きずり込まれてしまう。第2楽章。ここでは巨匠の至芸が聴かれる。歌心に満ちた主題と変奏。時のたつのも忘れてしまう。第3楽章。ここでもメニューイン、ケンプが白熱した演奏を聴かせる。歌心も忘れていない。

 Op.96はフランスの名手、ピエール・ロード(1774-1830)のために作曲、ロードとルドルフ大公が演奏している。第1楽章は後期への入り口を思わせ、自由さ・ロマン性が漂う。そのせいか、メニューイン、ケンプが歌心たっぷりな演奏を聴かせている。第2楽章。メニューイン、ケンプによる歌心溢れる演奏を聴くと、巨匠の至芸を感じてしまう。第3楽章。ベートーヴェンならでのスケルツォでは闊達さ、トリオでの歌心の対比が素晴らしい。

素晴らしいひと時である。コーダはト長調。力強く締めくくる。第4楽章。変奏曲による。歌心溢れる主題はききもので、素晴らしい。メニューイン、ケンプがベートーヴェンの変奏技法に対応し、ロマン・闊達さを繰り広げて行く。

 モーツァルト「フィガロの結婚」の主題による変奏曲は、第1幕「殿様が踊るなら」を用いている。ベートーヴェンが初めてヴィーンに行った折、モーツァルトに会ったことは今日、疑問視されている。モーツァルトへの憧れがあったためか、オペラ「魔笛」のアリアを主題とした変奏曲がある。「フィガロの結婚」はこの作品のみである。メニューイン、ケンプの演奏も味わいに満ちている。ほのぼのした雰囲気が素晴らしい。

 この全集を全て聴き終わってみると、巨匠の至芸を改めて感じる。ベートーヴェン、ヴァイオリン・ソナタの定盤として長く残るだろう。