ヴォルフガング・サヴァリッシュ シューマン 交響曲第1番 Op.38「春」 

 ヴォルフガング・サヴァリッシュ(1923-2013)がドレースデン・シュターツカペレを指揮したシューマン、交響曲第1番「春」を聴く。こちらは最終稿となっている。この作品はアドルフ・ベットガーの詩に基づくとされる。

 第1楽章、序奏を聴くと、シューマンが待ち望んでいた「春」が伝わって来る。手稿に基づいたオットマール・スウィトナーの演奏から、シューベルト、交響曲第8番、D.944、第1楽章の序奏の残照が響いていたことがはっきりする。サヴァリッシュは最終稿に基づき、シューマンのロマン性を見事に引き出している。再現部で序奏のファンファーレが響くと、春の到来を告げるかのようである。コーダでの畳みかけるような迫力とロマンの調和が素晴らしい。

 第2楽章。シューマンの音楽の本質たる歌がたっぷり歌われ、春の夕べの情景が広がっていく。そこから、第3楽章へとつながっていく。

 第3楽章。スケルツォ主部のきびきびとした表情は見事。2つのトリオがあり、第1トリオは闊達。生き生きした表情が伝わっていく。オーケストラの表情が素晴らしい。第2トリオの闊達さも聴きもの。コーダの抒情性豊かな締めくくりは印象に残る。

 第4楽章。喜びとほのかにさす暗い影。しかし、春の喜びに満ち溢れている。展開部も暗い影がさす。それも束の間、フルート・ソロに導かれ、春の光、喜びが戻って来る。コーダでは春の喜びが高まって来る。

 サヴァリッシュもNHK交響楽団の名誉指揮者である。バイエルン国立歌劇場音楽監督も務め、1992年、在任最後のオペラ公演でリヒャルト・シュトラウス「影のない女」では、市川猿翁による歌舞伎の手法を取り入れた舞台・演出を披露し、日本の聴衆への大きな土産となった。しかし、この演出もお蔵入りしたことは残念である。

 クリスティアン・ティーレマンによるシューマンツィクルスが素晴らしかっただけに、サヴァリッシュの演奏を聴き直してみると、これも名演として長く聴き継がれるだろう。