横山幸雄 ピアノリサイタル ベートーヴェン・プラス 第5回


 横山幸雄によるベートーヴェン・プラスシリーズは第5回となった。今回はベートーヴェン中期の傑作「ヴァルトシュタイン」「熱情」を中心に6つの変奏曲、Op.34、エロイカの主題による変奏曲とフーガ、Op.35をはじめ、ショパン、ソナタ第3番、Op.58、ブラームス、パガニーニの主題による変奏曲、Op.35、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲(横山自身の編曲)」、ラヴェル「夜のギャスパール」を1日がかりで取り上げた。

 まず、6つの変奏曲とエロイカ変奏曲。どちらもベートーヴェンの変奏曲の傑作である。ベート―ヴェンの変奏曲の大部分は作品番号のないものがほとんどで、この2つの変奏曲の他に自作主題による変奏曲はOp.76、晩年の記念碑的なディァベッリ変奏曲はOp.120がついている。6つの変奏曲は調性を変えつつ、主題の性格を変えていくため、多様かつ深みがある。エロイカ変奏曲は、1804年作曲の交響曲第3番、Op.55のフィナーレでも同じ主題を用いているため、その名がある。ピアノによるものはその原型としても重要である。横山はその特徴を見事に表出していた。

 「ヴァルトシュタイン」、「熱情」は横山の円熟した姿を聴き取ることができた。その間のOp.54は奇妙な作品とはいえ、愛すべき面を引き出していた。

 ブラームスは、カール・タウジッヒのためとはいえ、ブラームスならではの深みも持ち合わせた作品で、ブラームスの深さ・渋さも表出していた。ショパンも歌心に満ちた名演であった。

 横山自身の編曲による「牧神の午後への前奏曲」は、ピアノの色彩感を見事に生かしていた。ラヴェルでは研ぎ澄まされたピアノの音色、スケールの大きさが光った。

 アンコールは横山自身の編曲によるバッハ=グノー「アヴェ・マリア」が見事にコンサートの余韻を残した。このシリーズもあと2回となった。どんな内容になるかが楽しみである。