アンドレアス・ボイデ ブラームス ピアノソナタ 第1番 Op.1 ピアノソナタ 第2番 Op.2 スケルツォ Op.4 

 ドイツの中堅、アンドレアス・ボイデはオルシャッツ出身、ドレースデンでアマデウス・ヴェーバージンケ、クリスタ・ホルツヴァイリッヒ、ロンドンでジェームズ・ギップに師事、ヘンレ版のブラームス、ピアノ作品集の校訂に当たっている。これはオームスからリリースしたブラームス、ピアノ作品全集の第1巻で、ペーター・レーゼル、ゲルハルト・オピッツにに次ぐもので、一聴の価値がある。

 ソナタ第1番は第1楽章、第1主題がベートーヴェン、ソナタ第29番、Op.106「ハンマークラヴィーア」の第1主題に似ていると指摘される。ブラームスは偉大な大先輩の偉業を受け次ごうとする意気込みが感じられる。壮大さとロマン性が融合した素晴らしい作品である。第2楽章はドイツのミンネリートを主題とした変奏曲。ここにもブラームスがドイツの古謡を重視する姿勢が感じられる。「ドイツ民謡集」を編纂、出版していることからもうかがえる。ハ短調の渋みからハ長調の明るさへと移り、第3楽章へ繋がる。ホ短調、8分の6拍子のスケルツォ。トリオはハ長調、4分の3拍子、第1楽章との繋がりがある。若きブラームスの意気込み、ロマン性も十分である。第4楽章、フィナーレは第1楽章に基づく8分の9拍子の主題、ト長調で現れるロマン性豊かな主題、8分の6拍子で現れる主題はスコットランド風で、コーダでは8分の9拍子、6拍子が混ざり合い、最後は8分の6拍子で力強く締めくくる。

 第2番は第1楽章の激しい、ドラマティックな第1主題に始まる。全体に暗い、情熱的な楽章でバラード風な楽章で、こちらの方がブラームスの本質に近いような気がする。第2楽章もドイツのミンネリートにより、暗い雰囲気で第3楽章、スケルツォに繋がる。8分の6拍子で、トリオはスコットランド風の響きが聴こえる。第4楽章、フィナーレは序奏付きソナタ形式、ロマン的で歌心に満ち、構成力も見事である。ロマン主義であっても、一定の構成感、統一感が感じられる。

 スケルツォ、Op.4は、リストがショパン、スケルツォ第2番、Op.31との類似性を指摘している。2つのトリオがある。トリオ1はロマン性に溢れ、トリオ2は歌心に満ちている。ブラームスはショパンへのオマージュとして書き上げたようにも思える。

 1853年6月12日、ブラームスはヴァイマールにリストを訪ねた折、リストがソナタ第2番、スケルツォを初見で演奏した際、ブラームスの才能を認め、出版社も紹介しようとした。しかし、リストのサロンの雰囲気になじめず、それまで同行していたヴァイオリニスト、エドゥアルト・レメーニと袂を分かち、生涯の友となったヨーゼフ・ヨアヒムの励ましのもと、1853年9月30日、10月1日、デュッセルドルフにローベルト、クラーラ・シューマン夫妻を訪ね、ソナタ第1番、Op.1、第2番、Op.2、スケルツォ、Op.4を演奏、シューマンの賞賛を得た。シューマンは「新しき道」でブラームスを音楽界へ送り出した。

 ボイデの演奏は野心的なブラームスの姿、ロマン主義と形式との融合を求めんとするブラームスの姿を見事に描きだしている。