オットマール・スウィトナー シューマン 交響曲第1番 Op.38「春」

 オットマール・スウィトナー(1922-2009)はドレースデン、ベルリン国立歌劇場の常任指揮者をはじめ、NHK交響楽団名誉指揮者となり、日本の音楽ファンにも親しまれた。NHK交響楽団の楽員たちは「我らがおやじ」と慕っていた。

 モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームスの交響曲のレコーディングは貴重な遺産で、モーツァルトはライヴも残っている。シューマン、交響曲第1番、Op.38「春」は1841年の自筆譜に基づく演奏で、この作品本来の姿を伝えた名演である。

 第1楽章の序奏を聴くと、シューマンが書きたかったものが伝わる。メンデルスゾーンの忠告は当時の楽器の性能を見計らってのことだっただろう。シューマンの意図が滲み出ている。シューマンが加筆訂正した上で出版社に手渡したと見ていいだろう。

 第2楽章は出版に際して、オクターヴによる分奏となっている。自筆草稿では下の音のみで、しっとりとした美しさが見事である。シューマンは標題に捉われない、純粋な音楽としてこの交響曲を書き上げたと見たい。

 第3楽章、スケルツォのトリオは1つで、2つ目は出版の際に加筆している。そのため、かえってすっきりしたものとなっている。シューマンはこのままにしたかったかもしれない。

 第4楽章の序奏にフルート・ソロが入っている。春たけなわの雰囲気を表現したかっただろうか。提示部コデッタは第1楽章コデッタとの関連付けが見られる。全曲の統一性も意図していたことが窺える。「純粋な音楽」として書き上げたことの裏付けにもなる。再現部前のアンダンテの部分はトランペット・ソロ、フルート・ソロなどが聴こえる。出版に際して、フルート・ソロをこの部分に持ってきて、バランスを図っただろう。

 この演奏は本来の姿を伝えた名演で、長く残しておきたい。