ヘルムート・ヴァルヒャ バッハ パルティータ 第4番 BWV827 第5番 BWV829 第6番 BWV830

 ヘルムート・ヴァルヒャのバッハ、パルティータ、第4番から第6番を聴く。全体を見るとアルマンド、クーラント(コレンテ)、サラバンド、ジーグといった組曲の基本線を守りながら、配置が自由になったり、テンポ・ディ・メヌエット、テンポ・ディ・ガヴォットと指示するだけになっている。

 第4番は序曲に始まる。堂々とした序奏、闊達な主部は素晴らしい。がっちりとした太い線が通っている。堂々たる足取りの中に歌心たっぷりのアルマンド、クーラントは生気に溢れている。アリアは舞曲風でありながら、歌が溢れている。サラバンドの深遠な歌心は素晴らしい。メヌエットは古風でありながらも歌に満ちている。ジーグの高揚感とスケールの大きさ、歌が一体化している。

 第5番はプレアンプルムに始まる。スケールの大きさと歌が調和して、素晴らしい世界が広がる。アルマンドは堂々とした足取りの上に細やかな音形が流れて行く。コレンテは流麗さと歌に溢れている。サラバンドは符点リズムによりつつもじっくりと歌い上げて行く。テンポ・ディ・メヌエットはクロス・リズムが特徴で、後にショパンがワルツ、Op.42、シューマンがダヴィド同盟舞曲集、Op.6の第10曲で用いている。リュート・ストップを用い、リュートを思わせる。歌も豊かである。パスピエの洗練されたフランス趣味と歌は聴きものである。ジーグも高揚感とスケールの大きさ、歌が一体化している。

 第6番はトッカータに始まる。ホ短調と言う調性特有の侘しさの中に、バッハの心境を見る思いがする。主部に入ると、厳格なフーガとして展開する。その堅固さが曲を深いものにしている。アルマンドの深遠な歌、コレンテの引きずるような動き、細やかさの中に歌が活きている。エールの豊かな歌に溢れた演奏、サラバンドの重厚でありながらも深遠な歌には、当時のバッハの思いが窺える。テンポ・ディ・ガヴォッタはフランス風の流麗さの中に深みのある歌が素晴らしい。ジーグは6曲のパルティータの締めくくりに相応しい深遠さ、壮大さを併せ持った1曲で、ヴァルヒャが歌を大切にしながら堅固さに根差したスケールの大きな演奏を見せ、締めくくる。

 今聴いても、ヴァルヒャのバッハ演奏はドイツの大地に根差した素晴らしい演奏である。ヴァルヒャのバッハも長く残るだろう。