ディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウ 東京ライヴ 1974

 ドイツを代表する大歌手、ディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウ(1925-2012)が1974年、東京文化会館で行った、ハイネの詩によるシューマン・リサイタルのライヴ録音。これはFM東京「TDKオリジナルコンサート」が録音、放送されたもので、外来オーケストラ、演奏家たちのコンサートを取り上げ、いくつかCD化されてきた。

 1974年のフィッシャー=ディスカウの素晴らしい歌唱、日本を代表する名室内楽奏者、チェンバリスト、小林道夫を迎えてハイネとシューマンの世界が繰り広げられていく。「海辺の夜」Op.45-1、「春の夜に霜が降りた」Op.40-1、「緩やかに走る僕の馬車」Op.142-2がたっぷりと歌われ、リーダークライス、Op.24では恋の憧れと失恋、回想が歌われる。名作、詩人の恋、Op.48。第1曲「美しい5月に」から春の喜びとともに開いた恋の思いを歌い上げ、憧れが高揚する。第6曲「清き流れのラインに」の堂々とした歌いぶり、恋の絶頂。第7曲「恨みなし」から失恋の悲しみが始まる。切実な歌いぶりが見事である。第11曲「ある若者」のアイロニー、第12曲「明るい夏の日」ににじみ出る悲しみ、第13曲「夢の中で泣いた」に引き継がれ、悲しみが深くなる。第14曲「夢のたびに」の諦めから第15曲「古いおとぎ話」へと至る。第16曲「古い歌を」では最後の審判を思わせる面もある。しかし、後のシューマンを暗示するような面もある。

 アンコールでは「君は花の如く」Op.25-24、「自由な心」Op.25-2、「新緑」Op.35-4、「美しい異郷」Op.39-5、「孤独」Op.25-5。ゲーテ、ケルナー、アイヒェンドルフの詞による。シューマンの世界が広がり、素晴らしい余韻となった。