マリア・ジョアン・ピレシュ ピアノリサイタル


 ポルトガルのピアニスト、マリア・ジョアン・ピレシュが今年限りで引退するとのこと、日本でのさよならリサイタルとして12日、ベートーヴェン・アーベントを行った。(サントリーホール)

 ベートーヴェン初期の傑作、ソナタ第8番、Op.13「悲愴」、初期から中期への名作、ソナタ第17番、Op.31-2「テンペスト」、最後のソナタとなった第32番、Op.111を取り上げた。ピレシュはベートーヴェンの創作過程を見据え、ベートーヴェンがピアノに何を託したかを問いかけて来た。

 「悲愴」ではベートーヴェンが一つの動機を元に全体をまとめ上げ、有機的な作品に仕立てていく過程、「テンペスト」では幻想性、抒情性の中に2つの主要動機が中心となって全体をまとめる手法、無窮動的な動きの中にも確固たる統一性で全体をまとめる手法、最後のソナタではあらゆる無駄を捨て、簡潔かつ高貴な世界を築いたことを示した。ベートーヴェンがソナタというものをいかにして築き、高みに至ったか。ピレシュは私たちにしっかりと示した。

 アンコールはベートーヴェン最後のピアノ作品となった6つのバガテル、Op.126-5。ベートーヴェンが至った至高の境地を描きだし、余韻を残した。

 1974年の初来日以来、40年あまりにわたってモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ショパンを中心に素晴らしい音楽を伝えて来たピレシュが引退を迎えるにあたり、これだけ充実したベート―ヴェン・アーベントを行ったことは語り草になるだろう。

「ありがとう、ピレシュ。」

そう言いたい。17日のモーツァルト、シューベルトはどんな演奏になるだろうか。