小林五月 シューマンツィクルス 10


 シューマン演奏では伊藤恵と共に定評ある小林五月のシューマン・ツィクルス、第10回目はペダルフリューゲルのための6つの練習曲、Op.56といった珍しい作品とともにノヴェレッテン、Op.21から第8曲、第3曲、ヴァイオリンの原田幸一朗、チェロの毛利伯郎を迎え、ピアノ三重奏曲第1番、Op.63という地味ながら聴き応えある内容であった。(6日、東京文化会館小ホール)

 ノヴェレッテン第8曲はクラーラとの結婚への最後の戦い、歓びを描くかのようで、最後の部分で勝利の歓喜が聴こえてくるような演奏だった。第3曲はユーモアの中にふと、何かにとらわれているかのようなシューマンの心境が聴き取れる演奏だった。

 原田、毛利を迎えたピアノ三重奏曲はドレースデン時代のシューマンの心境、希望への思いが滲み出た名演だった。第1楽章のスケールの大きさ、メランコリーたっぷりの歌は絶品。第2楽章も見事にまとまった。第3楽章から第4楽章への解放感、溢れんばかりの歓びの声が会場を包んだ。

 アンコールはペダルフリューゲルのための練習曲から第6曲。清澄な響きが余韻を残した。次回はどんな組み合わせになるだろうか。