カール・リヒター ミュンヒェン・バッハ管弦楽団 バッハ 管弦楽組曲 第3番 BWV1068 第4番 BWV1069

 カール・リヒター、ミュンヒェン・バッハ管弦楽団による管弦楽組曲第3番、BWV1068、第4番、BWV1069は共にニ長調、壮麗さが際立つ作品である。宮廷の祝祭で演奏された可能性がある。

 第3番。序曲の壮麗さ、重厚さは聴きもの。主部中間部では独奏ヴァイオリンが活躍、協奏曲風な部分の後、壮麗さの中、全体を締めくくり、アリアへ進む。「G線上のアリア」として有名とはいえ、厳格さの中に内面から溢れゆく歌心が素晴らしい。ガヴォットも有名で、しっかりした大地の上に立つ宮殿を思わせる。トリオも同様。ブーレも宮殿を思わせる壮麗さ、重厚さが際立つ。ジーグはこの組曲の締めくくりに相応しい重厚さ、壮麗さが素晴らしい。

 第4番。序曲。ゲーテは、

「この威風堂々たる華やかさを聴くと、美しく着飾った人々の行列が広い階段を下りてくる姿が目に浮かぶようだ。」

と評している。少年時代のメンデルスゾーンはよく、ゲーテ家に出入りして、バッハの作品を演奏していた。1829年、メンデルスゾーンは「マタイ受難曲」を上演して、バッハ復興を果たした。ゲーテもバッハの管弦楽組曲の演奏に接した可能性がある。ゲーテの名言が息づくかのようである。ブーレ。華やかな主部、暗いトリオの歌のコントラストが見事である。

ガヴォットは荘重さに満ち、歌心も十分。メヌエットは生気に満ちつつも歌心に溢れ、トリオも同様である。歓び。全体の締めくくりに相応しい壮麗さに満ちている。

 バッハ演奏がピリオド楽器主体となっても、リヒターのバッハは今でも色あせていない。それは、人間の喜怒哀楽をありのままに、バッハの音楽の中に表現したからである。1981年、リヒターは日本公演を控えている中、ミュンヒェンのホテルで54歳の生涯を閉じた。あまりにも速すぎる死を惜しむ声は多い。それでも、リヒターが日本に与えた影響は大きく、樋口隆一、鈴木雅明といった、日本を代表するバッハ演奏家を産んだ原動力となった。