カール・ベーム クリスタ・ルートヴィッヒ ヴィーン楽友協会合唱団 ブラームス アルト・ラプソディー Op.53

 ブラームスは大作「ドイツ・レクイエム」Op.45の他に、カンタータ「リナルド」Op.50、「運命の歌」Op.54、「勝利の歌」Op.55、「哀悼歌」Op.82など、声楽とオーケストラのための作品を残している。この「アルト・ラプソディー」はアルト、またはメッツォ・ソプラノ、合唱、オーケストラのための作品で、ゲーテ「冬のハルツの旅」によっている。

 「冬のハルツの旅」はゲーテが青年プレッシングとともに2週間にわたる冬のハルツ山脈の旅の中で生れた。ブラームスがこの作品に取り掛かった1869年、密かに恋していたシューマンの三女ユーリエがイタリア貴族、マルモリット・ディ・ラディカ―ティ伯爵との結婚の知らせを聞き、愕然とした。これが作曲の背景となっている。ゲーテの詩は、人間不信に陥った若者への救いの手を差し伸べた内容で、ブラームスの心を捉えた。ユーリエはマルモリット伯爵との間に2人の子どもを産んだものの、肺結核を患い病弱だったため、3人目の子を宿したまま、この世を去った。ユーリエの子孫は今でも続いている。

 冬のハルツを思わせる暗く、厳しい旋律。独唱が淡々と歌い出す。憎しみ故、救われぬ若者、その苦しみを歌った後、合唱が加わって、神への救いを歌う。クリスタ・ルートヴィッヒの淡々とした歌いぶり、ヴィーン楽友協会合唱団が加わると、救いを求める祈りが伝わって来る。ベームがじっくりとまとめ上げた名演の一つである。

 初演では、独唱はシューマン夫妻と親交があったポーリーヌ・ヴィアルドー=ガルツィアだった。クラーラ・シューマンはこの作品に何を思っただろうか。