鈴木雅明 バッハ・コレギウム・ジャパン バッハ 教会カンタータ BWV32「慕わしきイエス、焦がれ求める主よ」

 鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパン、バッハ、教会カンタータ全集55巻は、日本のバッハ演奏における一大記念碑である。BWV32「慕わしきイエス、焦がれ求める主よ」はソプラノ、バスのためのコンツェルト形式によるカンタータで、1726年1月13日、主現節(エピファニー)から1週間後の日曜日に初演された。

 東方から、生後2週間後のイエス・キリストを訪ねた3人の博士がイエスと父ヨセフ、母マリアの許を訪れ、没薬・乳香・黄金を携えてやって来た。その後、当時のユダヤ王、ヘロデ大王は、ベツレヘムとその近くの幼子たちを殺す「ヘロデ大王の幼児大虐殺」という残虐行為を犯した。ヨセフ、マリアは幼いイエスを連れてエジプトに逃れた。ヘロデの死後、一家はガリラヤ地方、ナザレに移った。

 このカンタータは、ソプラノがイエスへの信仰を歌い、バスがイエスの声として応答する形式を取る。第1曲では、「ヨハネ受難曲」BWV245のアルトのアリアに使われた音型が聴こえる。第2曲、第3曲は、ルカ福音書第2章第46節、第49節を用いている。これは、イエスが12歳の折、両親とともにエルサレムに詣でた際、ユダヤ教の律法学者たちと議論していたことに基づく。第4曲、第5曲はイエスへの信仰に救われた信徒の魂が真の信仰へと導かれていく様子を見事に歌い上げている。第6曲、ここでコラール「恵みの門を開きたまえ」となって全曲を締めくくる。カンタータで取り上げているコラールは、日本のプロテスタント教会で取り上げてほしいとはいえ、なぜ、取り上げられないかが不思議である。

 ソプラノのレイチェル・ニコルズ、バスのペーター・コーイが素晴らしい歌唱を聴かせている。