カール・ベーム ベートーヴェン 交響曲第9番 Op.125「合唱」

 ベームがバイロイト祝祭管弦楽団、合唱団を指揮、ソリストにグンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)、グレース・バンブリー(アルト)、ジェス・トーマス(テノール)、ジョージ・ロンドン(バリトン)を迎えた演奏は1963年、ヴァーグナー生誕150年記念としてのライヴ盤である。

 バイロイトの第9と言えば、1951年のフルトヴェングラーだろう。ベームの演奏も負け劣らずの名演で、当時69歳のベームの気迫が素晴らしい。この年、日生劇場のこけら落としとして、ベルリン・ドイツ・オペラとともに初来日、モーツァルト「フィガロの結婚」、ベートーヴェン「フィデリオ」、第9の名演を聴かせ、今でも語り草になっている。

 第1楽章の凄まじい気迫から第2楽章、スケルツォもずっしりとした重さを感じさせる主部、第4楽章の歓喜の主題が聴こえるトリオの推進力も見事である。第3楽章の格調さの中に内面性たっぷりの歌心が満ちている。変奏に入り、ベートーヴェンがこの楽章に込めた思いが伝わって来る。コーダでの警告のような部分が入って来ると、第4楽章を予言するかの如く響く。第4楽章冒頭、怒涛のような部分、第1楽章から第3楽章までの回想、シラー「歓喜に寄す」の主題が現れる。再び怒涛のような部分、ジョージ・ロンドンの独唱は気迫に満ち、合唱を先導していく。ジェス・トーマスも然り。グンドゥラ・ヤノヴィッツ、グレース・バンブリーも自信に満ちている。

 ベームは、バイロイトでは「さまよえるオランダ人」、「トリスタンとイゾルデ」、4部作「ニーベルンゲンの指環」、「ニュールンベルクのマイスタージンガー」といった名演を残している。「さまよえるオランダ人」、「トリスタンとイゾルデ」、4部作「ニーベルンゲンの指環」は正規のライヴ・レコーディングとなったものの、「ニュールンベルクのマイスタージンガー」は正規盤での発売がなかったことは残念である。これが実現していたら、カラヤン、ヨッフムに匹敵する名演として残っただろう。

 この第9もベームがバイロイトに残した貴重な遺産として、フルトヴェングラーとともに残っていくだろう。