カール・リヒター ミュンヒェン・バッハ管弦楽団、合唱団 バッハ クリスマス・オラトリオ BWV248 その2

 カール・リヒター、ミュンヒェン・バッハ管弦楽団、合唱団によるバッハ、クリスマス・オラトリオも新年に入っていく。イエス・キリスト割礼、命名から東方の3博士来訪、ヘロデ大王によるイエス殺害計画挫折、主の勝利を高らかに歌う。

 全体に喜ばしい気分に満ち溢れ、明るく、かつ力強く進み、救い主出現を心から祝う合唱団の歌声が力強く、ドイツのクリスマスを描きだしていく。クラス、ヤノヴィッツの歌唱が素晴らしいし、心に染み入る。ルートヴィッヒ、ヴンダーリッヒも絶品だろう。

 もっとも、ヘロデ大王はエドム人、アラブ人の混血であり、ローマ帝国の後ろ盾で王位を得たことも手伝い、ユダヤ人たちの反感を買っていた。ヘロデ・アンティパスがヘロディアスを王妃とせんとして、それまでの王妃だったナバテアのアレタ王の王女と離婚した際、アレタ王と戦争になった際、ローマの援軍に頼ったほどである。ネロ治世下に起ったユダヤ戦争で、ユダヤをローマに売り渡したことも頷ける。ユダヤ人には売国王家と言えようか。そうした歴史的背景を見ても、イエス降誕に望みをかけたユダヤ人の心情も理解できる。

 リヒターは歴史を踏まえつつ、キリスト降誕の物語を忠実に描きだした名演である。エピファニーでヘロデの陰謀を潰した神の力を力強く歌う。リヒターの残した素晴らしい遺産として残るだろう。