日本音楽学会 第68回全国大会を終えて

 10月28日、29日、京都教育大学で2日館にわたり日本音楽学会、第68回全国大会が開催された。また、台風襲来、大会中止になるかという心配もなくなり、無事終了した。悪天候にたたられたとはいえ、熱気がみなぎっていた。

 全体的に意欲的な発表が目立った。ロマン主義音楽では、シェーンベルクのシューベルト受容は別な面でのシューベルト再評価につながるものがあった。シューベルトの即興曲、D.899と歌曲集「冬の旅」D.911との関連性に関するものは、内容は素晴らしいはいえ、発表が拙かった。ブラームス、ピアノ曲集、Op.118,119ではブラームスの作曲技法では重要なカノンについて、演奏を交えながらの発表だった。レジュメというより、論文として保存価値のあるものだった。ブルックナー、交響曲第6番の調性に関する研究も聴きごたえ十分なないようだった。

 中世、ルネッサンス、バロックでは中世の音楽理論、タリスの典礼作品、ゼレンカのミサ曲、バッハのライプツィッヒ時代のカンタータ、「フーガの技法」、平均律クラヴィーア曲集第1巻のテンポといった聴きごたえ十分なものが出て来た。バッハでは次男エマヌエルの言説の信憑性、平均律クラヴィーア曲集のテンポではカナダの奇才、グレン・グールドの演奏再考につながるものがあった。ただ、「フーガの技法」では時間配分面で惜しかった。

 モーツァルトでは、1780年代のザルツブルクでの作品受容、カンタータ「悔悟するダヴィデ」受容、ベートーヴェンでは初期変奏曲に関するもの、同時代の作曲家アントン・エーベルルの作品との比較分析からの個人様式再考に関するものが出た。モーツァルトがヴィーンに移住し、ザルツブルクになかなか帰郷できなかった時期、父レオポルトが作品普及に努めたこと、カンタータ「悔悟するダヴィデ」が様々な形で受容され、本来の形に戻るまでの変遷をたどる中で、一つの作品が本来の姿で演奏されることの難しさを浮き彫りにした。ぺ―トーヴェンの初期変奏曲が当時のオペラ、オラトリオを主題にした背景から、作曲家としてのベートーヴェンが名声を得る過程をたどることが出来た。ベートーヴェンは同時代の作曲家たちと切磋琢磨して、自己を確立したことが明らかになった。

 総会では、日本音楽学会の役員選挙をインターネットによる電子投票にすることに対して、かなり紛糾した。そのため、情報交換会の開始が遅れてしまった。とはいえ、こうした重要な問題の難しさを改めて感じた。来年は東日本支部担当になるものの、会場が決まらないという。11月には決まるというものの、どうなるか。