歌舞伎座10月公演 芸術祭 夜の部

 歌舞伎座10月公演、芸術祭夜の部は「沓手鳥弧城洛月」、「漢人韓文字手管始」、「秋の色種」の3本であった。

 大阪の陣、豊臣氏滅亡を描いた「沓手鳥弧城洛月」は、坂東玉三郎が新境地を開いた。豊臣秀吉の側室となり、秀頼を産んだ淀殿が豊臣滅亡に際し、次第に正気を失って、狂気におちいる様を見事な心理描写で描きだした。豊臣秀頼を演じた中村七之助、大野治長を演じた尾上松也などが光った。

 江戸時代中期に起った朝鮮通信使殺害を基にした「漢人韓文字手管始」は、中村鴈次郎、市川高麗蔵、中村芝翫が光る。長崎の花街の花魁、高尾、名山を巡る恋のさや当て、通信使への献上品を巡るいざこざがもとで、通訳を殺害することとなった。そうした伏線を見事に捉えた3人のやり取りは見事だった。ここでも尾上松也の好演が華を添えていた。

 朝鮮通信使は、江戸幕府の重要な外交政策の一つだった。将軍の代替わり、世継ぎ誕生祝いのため、12回来日した。11回目の1746年は船の破損・沈没、船長の転落死、船員同士の乱闘、病死など事件事故続きだった。その頂点が崔天宗殺害事件だった。最後となった1811年は対馬での儀礼だった。この通信使も幕末、ペリー、プチャーチン来航によりアメリカ、ロシアと和親条約を結び、開国したことを受け、途絶え、明治期に至る。こうした事件も歌舞伎として上演された意義は重い。

 「秋の色種」は坂東玉三郎、中村梅枝、中村児太郎の見事な踊り、梅枝、児太郎の筝の演奏といった見もの、聴きものぞろいで、素晴らしい締めくくりとなった。