ヴィルヘルム・ケンプ カール・ライスター ピエール・フルニエ ベートーヴェン ピアノ三重奏曲 第4番 Op.11「街の歌」

 ヴィルヘルム・ケンプを中心とするベートーヴェン、ピアノ3重奏曲全集の第4番、Op.11は、クラリネットにカール・ライスターを迎え、若きベートーヴェンの明朗闊達さが滲み出た演奏になっている。

 第1楽章の快活さ、ライスター、チェロのフルニエがピアノと一体化して、若きベートーヴェンの覇気溢れるものになっている。展開部もベートーヴェンらしく、充実したものになっている。

 第2楽章。チェロ、クラリネットのたっぷりした歌が素晴らしい。ケンプのたっぷりした歌心も彩を添えている。中間部のほの暗さ、ピアノの歌が聴きものだ。チェロ、ピアノとの対話も絶品。ベートーヴェンの緩徐楽章の歌心は真摯で、聴き手の心に迫って来る。その本質を捉えている。

 第3楽章。ベートーヴェンと同時期のオペラ作曲家、ヨーゼフ・ヴァイクル(1766-1846)オペラ「船乗りの愛、または海賊」の三重唱「約束の前に」を主題とした変奏曲で、当時流行していた旋律を用いたため、「街の歌」というタイトルがついている。ベートーヴェンならではの変奏技法を用い、音楽を深いものにしている。3人の奏者たちが持ち味を発揮して、心和む演奏に仕上げている。

 1970年のベートーヴェン生誕200年記念に向けた、素晴らしい全集の一こまだろう。