マリア・ローザ・ギュンター バッハ ゴールドベルク変奏曲 BWV988

 1991年、ブラウンシュヴァイク出身、ハノーファー音楽大学でマッティ・ラエカリオ、イェレナ・レーヴィットに師事、現在、ベルント・ゲツケの下、大学院で研鑽を積んでいるドイツの若手女性ピアニスト、マリア・ローザ・ギュンターは、ドイツではいくつかのコンクール入賞歴があり、特別賞も受賞している。このCDがデビュー盤だろう。2015年、ライプツィッヒ、メンデルスゾーン・ホールでのレコーディング、使用ピアノはスタインウェイである。

 主題のアリアの清純な響き、深い歌心。変奏の繰り返しの度に装飾音を入れ、変化をつけている。闊達さの中にも歌心が滲み出る。抒情性も豊かで、バッハへの深い思いが伝わって来る。聴き手が自然とバッハの世界へと引き込まれていく。変奏間の間の取り方も考えられている。ヴィルトゥオーソ的な部分にも歌心を忘れていない。第25変奏は8分余りとはいえ、音色・歌心が素晴らしい。この変奏こそ、演奏では大変難しいだろう。半音階的進行、アダージョで深みのある演奏を要する。ギュンターはじっくり歌い上げている。第30変奏のクォドリベットには豊かな歌が溢れている。主題アリアの再現。余韻豊かに締めくくる。

 1955年、グレン・グールドがこの作品でレコード・デビューしたことは有名である。最近、この作品をデビューCDにする若手ピアニストが増えた。その意味でも貴重な1枚である。

 ドイツ・ピアノ界は1990年の東西再統一以来、優れた若手が育ってきた。21世紀ドイツ・ピアノ界はペーター・レーゼル、ゲルハルト・オピッツを中心に、中堅クラスも充実している。どのような逸材が現れるかが楽しみである。