片山杜秀 大東亜共栄圏とTPP

 近代日本の思想史研究はもとより、近現代日本音楽研究、音楽社会史で定評ある片山杜秀はNHK-FM「クラシック音楽の迷宮」を担当、朝日新聞、レコード芸術などで音楽評論を執筆している。アルテス・パブリッシングから「音盤考現学」、「音盤博物誌」、「クラシック迷宮図書館(正・続)」、「線量計と機関銃」、「現代政治と現代音楽」を出版している。この「大東亜共栄圏とTPP」は7冊目に当たり、自ら担当する衛星デジタル放送ミュージック・バードの番組「パンドラの箱」の内容をまとめたものである。

 「パンドラの箱」は2010年4月に始まり、今年で7年。民進党政権から自民党政権へ戻っていく時代の流れを様々な音楽を聴きつつ論じていく。まず、諸井三郎「ピアノソナタ第2番」に始まり、「君が代」、「ラ・マルセイエーズ」、ピエール=オクターヴ・フェルー「群衆」のような日本では知られていない作品、軍歌、ヒンデミットの作品、スーザの行進曲、シェーンベルク「月に憑かれたピエロ」、守田正義「働く女性の歌」、石井歓の映画音楽、「巨人の星」の主題歌、渡辺浦人、交響組曲「野人」からの抜粋、佐藤勝「皇帝のいない8月」、ヴァーグナーへと至る。ナショナリズム、尖閣諸島問題、選挙、現在の安倍政権に関することを明快に論じている。

 音楽を通じて世相を読む片山の姿勢を示した一冊である。

 

(アルテス・パブリッシング 1600円+税)