赤坂治績 団十郎とは何者か 歌舞伎トップブランドのひみつ

 歌舞伎の大名跡、市川団十郎を論じたものとして、中川右介「悲劇の名門 団十郎12代」がある。今回、演劇評論家、赤坂治績が朝日新聞から出版したこの書は、歌舞伎・江戸文化の歴史の中で歌舞伎の大名跡、市川団十郎を12代にわたって論じ、好著の一つである。初代団十郎から12代団十郎、現在の市川海老蔵に至る市川宗家の歴史を歌舞伎・江戸文化から論じている。また、巻末に歌舞伎十八番の解説もある。

 団十郎家の出自、家紋、4代団十郎の出自、歌舞伎十八番、初代団十郎の横死、2代目団十郎の恋、5代目団十郎と4代目松本幸四郎との抗争、天保の改革での7代目団十郎の江戸追放、8代目団十郎の自殺、11代目団十郎の「我が闘争」といった歌舞伎の歴史の中での団十郎にまつわる事件を丹念、かつ良心的な筆致で論じている。現在の市川海老蔵のバーでの殴打事件も良心的である。

 しかし、海老蔵は小林真央夫人を喪った。そんな中で歌舞伎座7月公演を見事に演じ切ったとはいえ、課題もあった。夜の部「日本駄右衛門」では長男、勸玄君との親子宙乗りを見せ、話題となったものの、いくつもの役をこなすにあたって、性格描写が甘くなった面がある。様々な試みを重ねることも一つの道だろう。一方で、古典も大切にして、13代目団十郎を襲名するなら、時間をかけてほしい。赤坂もそう望んている。

 良心的な団十郎論として、一読をお勧めしたい。