サントリー芸術財団 サマー・フェスティバル ザ・プロデューサー・シリーズ 戦中日本のリアリズム アジア主義・日本主義・機械主義

 サントリー芸術財団、サマー・フェスティバル、ザ・プロデューサー・シリーズは戦中日本のリアリズム、アジア主義・日本主義・機械主義というテーマで尾高尚忠、山田一雄、伊福部昭、諸井三郎のオーケストラ作品によるコンサートで締めくくった。

 尾高尚忠、交響的幻想曲「草原」Op.19はアジアの広大な草原風景を描いた、雄大な作品である。尾高作品では、ピアノのためのソナチネがよく知られている。この作品に接して、これだけの作品を残した尾高の作曲家としての才能を再認識した。山田一雄、おほむたから(大みたから)、Op.20は1945年元日に放送初演されたもので、戦意高揚のためとはいえ、もう、日本の敗色が濃厚で空襲、沖縄戦、原爆投下、ロシア参戦、8月15日の敗戦となる。しかし、この作品には「葬送行進曲」の性格があった。そうした性格が打ち出されていた。

 伊福部昭、ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲は、円熟期の小山実稚恵の素晴らしいピアノが聴きもので、モダニズム、モートリッシュな性格、北国の孤独も描きだしていた。この作品は、日本人作曲家のピアノ協奏曲のレパートリーとしても定着してほしい1曲である。

 諸井三郎、交響曲第3番、Op.25は戦時中の日本の作曲家たちの思いが聴こえた。戦局が厳しさを増す1943年、音楽家、音楽学生も学徒出陣で戦場へ送られた。そんな中で、全てを注ぎ込んだ作品を残そうとした諸井の思いが伝わった。

3楽章形式で、終楽章が穏やかなハ長調で終わっていく。そこには、ショスタコーヴィチの第8番に共通するものが見られた。この楽章も穏やかに終わる。戦争の後の静けさ、安堵感の中に悲しみも秘めている。

 何より、下野竜也、東京フィルハーモニー交響楽団の素晴らしい演奏は特筆すべきだろう。下野は新日本フィルハーモニー管弦楽団と共に三善晃、矢代昭雄、黛敏郎の作品を取り上げたコンサートも行っている。今回のコンサートも下野の偉業の一つになろう。