カール・ベーム ベートーヴェン 交響曲第5番 Op.67

 カール・ベームがヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したベートーヴェン交響曲全集は、ベームの残した素晴らしい遺産の一つである。ベームはヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団と1975年、1977年に来日した際、交響曲第2番、Op.36、第3番、Op.55「英雄」、第4番、Op.60、第6番、Op.68「田園」、第7番、Op.92を取り上げている。第5番はむろんのことである。第4番から第7番まではライヴ録音もある。

 ベームの音楽作りは無駄がない。それがかえって音楽の核心を明らかにする。このレコーティングは1970年5月、ベートーヴェン生誕200年ということもあり、意気込みが伝わる。

 それこそ、ベームの真頂骨である。第1楽章の厳格さが際立つし、第2楽章もたっぷり歌いながらもしっかりした線が通っている。第3楽章の不気味さ、力強さ、トリオとの対比が聴きどころである。さて、元来この楽章はABABAのロンド風形式だったが、ABAで演奏されることが通例となっている。ベートーヴェンは、運命に苦しむ人間の姿をじっくり伝えたかっただろう。第4楽章へとなだれ込んでいくと、勝利の凱歌となる。しかし、再現部前に第3楽章の旋律が現れる部分は回想だろう。凱歌は響き渡る。

 この作品は「運命」の名で有名になり、「運命」「未完成」の組み合わせはレコード、CDでは売上の定番となっている。しかし、この名に関するアントン・フェリックス・シンドラーのベートーヴェン伝での伝聞は全くのウソである。シンドラーはベートーヴェンの英雄神話化を推し進め、捏造・歪曲も多い。日本でも「運命」の名を記すことはなくなりつつあっても、まだ残っている。交響曲、ベートーヴェンと言えば、この作品が代名詞になったことも、また事実だろう。その意味でも、この人気は衰えないだろう。