大宅映子編著 大宅壮一のことば

 戦後日本を代表するジャーナリスト、評論家の一人、大宅壮一(1900-1970)は、50代以上の方々は、フジテレビ「大宅壮一サンデーニュースショー」でご存知だろう。この書は大宅の三女で評論家、日本初の雑誌図書館「大宅壮一文庫」理事長を務める大宅映子が、大宅の著作全集から抜粋してまとめたものである。

 大宅は、テレビについて、

「テレビというものは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると一億総白痴化になる。」

と草創期のテレビ番組を批判していた。しかし、テレビのニュースキャスターとして1960年代の日本の世相、社会、政治を様々な角度から見つめ、批評して来た。この時期のテレビのニュースキャスターを見ると田英夫、小川宏、古谷綱正など、素晴らしい人材が輩出した。

 また、大宅自身、テレビというメディアを愛し、活用した面もある。その中で、マスコミの力、レッテル化の功罪を論じている。1960年代の自民党政治、野党に厳しい目を注ぐ。また、志賀直哉、谷崎潤一郎、川端康成、石川淳、安倍公房、石原慎太郎などの作家たちへの眼差しも鋭い。ただ、大宅は1970年11月22日、70歳で生涯を終えたため、3日後の25日に起った三島由紀夫の自衛隊乱入、割腹自殺を遂げた「三島事件」まで生きていたら、どんな言葉を残しただろうか。昭和の虚構を見抜く力も素晴らしい。天皇制、公明党と創価学会、アポロ11号の宇宙飛行士への文化勲章授与、大阪万国博への批判も、平成の今に響くものがある。

 映子氏はインターネットで「白痴化」が進んだこと、政治家の劣化が進んだこと、作家と社会とのあり方、2016年に東京都知事となった小池百合子氏に対しても厳しい視点を向けている。昭和を論じた父親と平成の今をしっかり見据えている。

 歴史・世相・社会を考える際、この書は大きな意義がある一冊である。

 

(KADOKAWA 1200円+税)