東京二期会 リヒャルト・シュトラウス ばらの騎士

 東京二期会、リヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」は二期会創立65周年、財団設立40周年記念公演として、イギリス、グラインドボーン音楽祭との提携公演との上演となった。2003年、二期会創立50周年記念上演の際は、ケルン歌劇場との提携公演だった。ケルンの演出が現代的な部分を取り入れていたのに対し、グラインドボーンの演出は古典色を活かしつつ、現代的な面とを見事に調和させた演出だった。(東京文化会館)

 グラインドボーン音楽祭は1934年、資産家ジョン・クリスティがオペラ歌手だった夫人のために創設した音楽祭でモーツァルト、ヘンデル、ビゼー、ヴァーグナー、ヤナーチェクのオペラをはじめ、ガーシュウィン「ポーギーとベス」も上演している。観客はロンドン市民がほとんどで、グラインドボーンへの専用列車もあるという。

 今回はベルリン生まれで、最近注目されつつあるドイツの中堅指揮者、セバスティアン・ヴァイグレ、読売日本交響楽団との上演で、ヴァイグレはリヒャルト・シュトラウスの響き、音楽を読売日本交響楽団から見事に引き出し、素晴らしい成果を上げた。

 時は18世紀、マリア・テレジア時代のオーストリア、ヴィーン。若い貴族との戯れの恋に生きる元帥夫人。そこへ親族のオックス男爵が新興貴族、ファーニナル家の娘ゾフィーと結婚するため、婚約の使者「ばらの騎士」を推薦するよう依頼するためにやって来る。そんなオックス男爵を懲らしめようとする夫人、また、自分の若き日を思い出し、老いに向かう姿を思うと憂鬱になる。戯れの恋の相手、オクタヴィアンが「ばらの騎士」としてファーニナル家を訪れ、ゾフィーに一目惚れ、未熟ぶりに気づく。オックス男爵の粗野な言動に嫌気がさしたゾフィーを救うべく立ち上がる。ゾフィーもオクタヴィアンに惹かれ、救いを求める。若い2人が大人へと成長する過程、戯れの恋に終止符を打つ元帥夫人の葛藤。古き良き貴族社会を舞台に繰り広げられるオペラとはいえ、20世紀初頭のドイツ・オーストリアは、貴族社会も終わりに近づいていた。1918年、第1次世界大戦終結と共に貴族社会は崩壊する。ここには「過去への郷愁」が漂う。

 オクタヴィアンを演じた小林由佳は、大人の貴族へ成長する男の姿を見事に演じた。林正子も戯れの恋から成熟した女性に至る姿、妻屋秀和は好色な田舎貴族のオックス男爵、ゾフィーを演じた幸田浩子も大人の女性に成長する姿を見せた。このオペラのキーロール、陰謀屋ヴァルツァッキ、アンニーナを演じた大野光彦、石井藍の素晴らしい演技は大きい。加賀清孝のファーニナルも見事だった。