歌舞伎座7月公演、夜の部は「駄右衛門花御所異聞」、市川海老蔵親子の宙乗りが話題になった演目である。日本駄右衛門は「白浪五人男」の一人で、「秋葉権現廻船語」として1761年に初演、今回は新しい脚本・演出による復活上演となった。
市川海老蔵が駄右衛門、玉島幸兵衛、秋葉大権現の3役を見事に演じ切った。その変わり目のタイミングもよく構成されていた。性格描写面では個々の役の持ち味を出したとはいえ、今後の課題もある。これに対して、中村児太郎のお才が見事で、役者として著しい成長ぶりを見せた。最後の三津姫も素晴らしい。
また、市川右団次、市川中車、坂東巳之助、坂東新吾の演技も光った。市川斎入の風格ぶりも見ものだった。殊に、細川勝元での中車のセリフ回しには歌舞伎役者としての立ち位置が感じられた。
海老蔵が小林真央夫人を喪い、役者として試練の時だろう。今回の復活上演に懸ける意気込みは十分あっただろう。3役を演ずるにも性格描写ではいま一歩である。「毛抜」、「鳴神」を通し上演した功績は評価しても、いくつもの役を演ずる時の性格描写が深まれば、役者として成長できるだろう。ドラマとして見た場合、中村児太郎の成長ぶりが見られ、歌舞伎役者としての市川中車の立ち位置もはっきりしてきた。その意味で、歌舞伎の深さを改めて感じた一時であった。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:51)
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