ウィリアム・ウェーバー 音楽と中産階級 演奏会の社会史

 これは1983年、法政大学出版局から城戸朋子の訳で出版、2015年に新装版として再版されたものである。

 1830-1840年代のロンドン、パリ、ヴィーンの中産階級の台頭とコンサートがどのような形で行われていたかを示す社会史としての史料価値はある。市民革命により中産階級が台頭、下層市民階級への音楽の広まりではロンドン、パリでは発展した一方、絶対主義が根強かったヴィーンはディレッタントが強く、定期演奏会形式のコンサートは1842年、ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団設立に至るまで、宗教音楽演奏会が中心となった。ヴィーン楽友協会のコンサートは、1860年代、ブラームスが常任となるまで演奏水準が低かった。また、出版社で作曲家、ハスリンガーによるサークルの閉鎖的体質だったこともコンサートの水準の向上を妨げていた。

 また、ロンドン、パリ、ヴィーンでは下層市民向けのプロムナード・コンサートが始またたこと、合唱団、オーケストラ設立の動きも出て来る。ドイツ・オーストリアの場合、合唱団の活動がルネッサンス・バロック音楽復興に寄与したことは大きい。都市の音楽協会設立がメンデルスゾーン、シューマンの活動の源泉になったことも重要である。

 ただ、城戸の訳は読みやすいとはいえ、そろそろ新訳出版が必要ではなかろうか。原書の改訂の可能性もあるだろう。その際、欠陥も出て来るだろう。その意味でも新訳を出版する意義はあるだろう。

 

(法政大学出版局 3500円+税)