ミヒャエル・コルシュティク シューマン クライスレリアーナ Op.16

 ドイツのピアニストで注目株、ミヒャエル・コルシュティクによるシューマン、クライスレリアーナを聴く。コルシュティクはベートーヴェン、ピアノソナタ全集をOEHMSからリリースしている。このシューマンもOEHMSからで、アラベスク、Op.18、カーナヴァル、Op.9が入っている。

 第1曲から聴き進めていくと、シューマンの音楽の本質を捉えた名演で、E.T.A.ホフマン「牡猫ムルの人生観」に登場する楽長ヨハネス・クライスラー、「カロ風幻想画集」のエッセイ「クライスレリアーナ」をもとに、シューマンが緻密な統一法を用いて、この傑作を完成していったことがわかる。

 ホフマンは作家、指揮者、作曲家として活躍、しかしプロイセンの官吏として46歳の生涯を終えている。シューマンは、ホフマンの人生に自分の人生の縮図を見ただろう。第8曲が弱音で終わっていることを考えると、自分がホフマン同様、46歳で世を去ること、「牡猫ムルの人生観」が未完であり、クライスラーが狂死するようになっていた構想からしても、1854年、デュッセルドルフのライン川に入水自殺を企て、エンデニッヒの精神病院に入院した後、1856年に自らの生涯を終えたことと重なる。第8曲はクライスラー、シューマンの死を描いたものだといえようか。

 コルシュティクもベートーヴェン、ピアノ・ソナタ全集がある以上、来日してほしいピアニストの一人である。レーゼル、オピッツに続く存在としての期待は大きい。ぜひ、来日が実現してほしい。