ヴァレリー・ゲルギエフ ショスタコーヴィチ 交響曲第7番 Op.60「レニングラード」

 20世紀ロシアを代表する作曲家ドミトリー・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が第2次世界大戦のドイツ軍によるレニングラード(現サンクト・ペテルブルク)包囲の最中、生まれ育ったこの地の人々への励ましとして作曲した交響曲で、全曲演奏するだけで1時間20分あまりを要する大作である。ショスタコーヴィチはソヴィエトの体制、とりわけスターリン、ブレジネフと対峙しつつ、創作活動を進めていった。

 ヴァレリー・ゲルギエフは21世紀ロシアを代表する、尤も勢いのある指揮者である。最近、ロンドン交響楽団などを掛け持ちしているようだが、ロシア、マリインスキー劇場に腰を落ち着けてほしい。このCDはマリインスキー劇場管弦楽団とのレコーディングで、ロシア音楽の魂が宿っている。

 第1楽章。ドイツ軍のロシア侵攻を告げるかのような不安をはらんでいる。ヒトラーはロシア侵攻を日本、イタリアに隠していた。ことに、日本には用心深く、重要機密にしていた。サンクト・ペテルブルク包囲戦は3年近く続く。その間、ドイツ軍はロシアの冬に阻まれ、モスクワ攻撃に失敗、スターリングラード(現ボルゴグラード)でロシア軍が勝利を収め、サンクト・ペテルブルクも解放された。その後、怒涛のような進撃ぶりでポーランドを解放、アウシュヴィッツ収容所をはじめとしたユダヤ人たちの救出、東からドイツに進撃、勝利を収めた。最後は静か、かつ消え入るように終わっていく。

 第2楽章。静かなスケルツォ。ドイツ軍に包囲された中、極限状態の中に生きる人々の思いを描きだしている。絶望感、飢えと厳しい冬。それでも闘わんとする意志が伝わって来る。

再び、暗い絶望感、飢えと厳しい冬の光景に戻っていく。

 第3楽章。コラール風の主部。勝利と解放への祈りが聴こえる。歌心たっぷりにじっくり歌いあげられていく。テンポが速まって、戦争の光景を描きだす。また、コラール風の主部に戻り、祈りと希望が強まっていく。静かな祈りの中、第4楽章へと続く。

 第4楽章は闘いに始まる。勝利と解放の足音が聴こえ、人々の希望が増していく。絶望感も現れたりする。しかし、勝利と解放への足音は確固となり、歓びに溢れたものとなる。勝利の歌が高らかに歌われ、全曲を閉じる。

 今、ロシアの楽壇はサンクト・ペテルブルクの勢いが止まらない。しかし、モスクワはボリショイ劇場が勢いを取り戻しつつある。モスクワの動向も楽しみである。