アルフレード・ブレンデル、トーマス・ツェートマイヤー、タベア・ツィンマーマン、リヒャルト・ドゥヴェン、ペーター・リーゲルバイヤー シューベルト ピアノ5重奏曲 D.667「ます」

 アルフレート・ブレンデルがトーマス・ツェートマイヤー、タベア・ツィンマーマン、リヒャルト・ドゥヴェン、ペーター・リーゲルバイヤーといった名手たちとのシューベルト、ピアノ5重奏曲「ます」はドイツ・オーストリアの香り高い演奏といえよう。

 ブレンデルは梶本音楽事務所が招聘先となって何度か来日していた。2001年に高柳音楽事務所の招きでの来日が最後となって、2008年に引退となったことは残念である。これは、1990年代~2000年代初頭、日本の音楽マネージメントの世代交代が原因である。大手の高柳音楽事務所、神原音楽事務所が廃業、コンサート・エージェンシー・ムジカ、ムジーク・レーベン、日本交響楽協会が倒産した。代わって大手はパシフィック・コンサート・マネージメント、ヒラサ・オフィスが出て来た。このどちらかが招聘先になっていたら、ブレンデルのさよならコンサートが実現しただろう。

 第1楽章はブレンデルのピアノがツェートマイヤーらと見事に調和して、素晴らしい音楽を生み出している。シューベルトの歌心が自然と滲み出ている。第2楽章もシューベルトの世界を堪能できる。第3楽章はシューベルトがヨハン・ミヒャエル・フォーグルとともに訪れたシュタイヤーの自然の香りが漂う。ブレンテルと名手たちとの自然な呼吸が心地よい。第4楽章は歌曲「ます」の主題による変奏曲で、弦による主題の後、ピアノが加わり、変奏を繰り広げる。川に泳ぐます、新鮮な水しぶきが眼の前に浮かぶかの如くである。第5楽章はスケールの大きな演奏で、シューベルトの歌も大切にしている。

 日本の音楽マネージメントの世代交代が外来演奏家招聘に大きな影響を与えたことは大きいだろう。ブレンデルは貧乏くじを引かされ、引退まで来日公演がなかったことは惜しい。新しい大手音楽マネージメントが招聘先にならなかったことは残念である。