アンジェラ・ヒューイット バッハ・オデッセイ 第1回、第2回


 カナダの女性ピアニスト、アンジェラ・ヒューイットが4年12回にわたり、バッハの全クラヴィーア作品を取り上げるリサイタル・シリーズ、バッハ・オデッセイ第1回はインヴェンションとシンフォニア、BWV772-801を中心としたプログラム、第2回はフランス組曲全曲、BWV812-817を取り上げた。(29日、30日 紀尾井ホール)

 第1回では、ピアノを学ぶ人々必修のインヴェンションとシンフォニアがヒューイットのような名手の手にかかると、魅力的な小品として聴き手を惹き付けていくことを示した。イタリア風のアリアと変奏、BWV989は後の大作、ゴールドベルク変奏曲への雛型で味わい深い演奏だった。幻想曲、BWV906はバッハが後のソナタ形式を予見していたことを示し、インスピレーション豊かだった。カプリッツィオ、最愛の兄の旅立ちに寄せて、BWV992は情感たっぷりで聴きものだった。ヨハン・クリストフ・バッハを讃えて、BWV993も捨てがたい味わいに満ちていた。幻想曲とフーガ、BWV904も秀演だった。アンコールはゴールドベルク変奏曲、アリアだった。

 第2回はフランス組曲全曲。前半が第1番、第2番、第4番。後半が第6番、第3番、第5番。この組曲全曲の新たな魅力を再発見できた。ヒューイットは繰りかえしの際、装飾音などを即興的に加えたり、音高を変えたり、第5番のサラバンドでは初稿、異稿を取り換えて素晴らしい世界を作り出していた。第4番では第2ガヴォットを含めて演奏していた。最近、ドイツのヘンレ社からフランス組曲新版が出て、いくつかの異稿が含まれていることからしても妥当である。音色の明晰、かつ美しい響きはバッハに相応しい。アンコールはラモー、タンブランであった。

 9月はパルティータ全6曲を取り上げる。楽しみなシリーズである。