赤松林太郎 ピアノリサイタル


 神戸大学、パリ、エコールノルマル音楽院出身、国内の主要コンクール優勝、2000年、デュッセルドルフでのクラーラ・シューマン国際コンクール3位をはじめ、国際コンクール受賞歴も豊富な赤松林太郎の帰国10年記念リサイタルはシューマン、ユーゲント・アルバム、Op.68から「春の歌」、ベートーヴェン、ソナタ第17番、Op.31-2「テンペスト」、ヴァーグナー、「ヴァルキューレ」より「ジークムントの春と愛の歌」(タウジッヒ編曲)、「トリスタンとイゾルデ」より「イゾルデの愛の死」(リスト編曲)、シューマン=リスト「献呈」、シューマン、クライスレリアーナ、Op.16を取り上げた。(24日 ヤマハホール)

 「春の歌」での素晴らしい歌に続き、ベートーヴェンのドラマトゥルギー、ロマン性の表出の見事さ、息を尽かせないほどの演奏だった。ヴァーグナーのオペラからの2曲はタウジッヒのものは原曲に忠実、リストのものも忠実さと自由さを併せ持っている。リストによる「イゾルデの愛の死」の方が優れた編曲で、昨年二期会での上演が話題を呼んだこともあってか、素晴らしい出来栄えだった。

 リスト編曲によるシューマン「献呈」は、クラーラへの結婚祝いとして贈った歌曲集「ミルテの花」Op.25の第1曲で、シューマンの原曲を活かした名編曲である。シューマンの心を捉え、最後は静かに締めくくった。クライスレリアーナは名演。E.T.A.ホフマン「雌猫ムルの人生観」に登場する楽長ヨハネス・クライスラーの生涯を描いた名作で、第8曲は、ホフマンはクライスラーが狂死するように設定たためか、クライスラーの狂気と死というべきもので、シューマン自身狂死に至ったことを考えると、クライスラーの運命に中に自らの運命を読み取った上で、最後の弱音はクライスラーの死を暗示している。そこも見事に捉えていた。

 アンコールはシューマン、ユーゲント・アルバムから「愛しい5月がやってきた」、無題、子どもの情景、Op.15から「トロイメライ」でリサイタルの締めくくりとした。12月にも銀座、王子ホールでのリサイタルがあるという。楽しみである。