林田直樹 ルネ・マルタン プロデュースの極意

 日本では2005年のゴールデンウィークから始まった音楽祭、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン。2017年で12年目を迎え、親子連れをはじめ、多くの聴衆を集める一大イヴェントに成長した。このラ・フォル・ジュルネは1995年、フランスのナントで始まり、複数のコンサートを組み合わせ、朝から晩まで何十何百と行い、安価な入場料、いくつかはしごして楽しめるようにした。これは日本でも踏襲されている。

 多くの人々をクラシック音楽を提供すること。好奇心をそそるテーマ・楽曲・プログラミングの多様性。演奏家には新しく耳を傾けてくれる聴衆との出会いの場になったこと。クラシック音楽は全ての人の宝。これこそ、大切なことではないか。

 音楽評論家、林田直樹がこの音楽祭を企画、プロデュースに当たったルネ・マルタンにインタビューして、ラ・フォル・ジュルネの本質を日本の聴衆に伝えている。まず、好奇心、豊かさと夢、全ての架け橋となること。クラシック音楽は全ての人々の宝である。音楽祭の企画には音楽、低価格が不可欠であること。演奏家と聴衆との出会い。企画はプロデューサーの勉強の場であるとともに、何ができるか考えること。相手との距離。独立性の大切さ。使命感と天職としての自覚。ビジネスには愛が必要であり、相手への敬意、愛情の大切さ。自己貫徹、人と会って細やかに話をすること。新しい耳、聴くことと静寂。美しい風景。場所。マルタンは人間としての独立心を保ちつつ、人に敬意を払い、かつ尊重する姿勢を重視する。

 また、人生における家庭・家族の大切さ、セックスの大切さも説く。これは日本における性のあり方への警鐘でもある。子どもの頃から性の大切さを説くことは、人間の存在・尊厳・愛の本質を真に理解することカギになるだろう。さらに、民主主義の本質・宗教の尊さを説きつつ、クラシック音楽は魂の言葉であると締めくくる。

その根底にはローマ・カトリック信者としての強い信仰心がある。

 ルネ・マルタンは日本を真の文化国家たらんとして、この音楽祭を企画・プロデュースして来た。類似の催しとして、仙台で行われる仙台クラシック・フェスティバルもこの音楽祭がなかったら実現しなかっただろう。外来演奏家・オペラに2~3万円、5~6万円といった高額入場料を取る風潮も転機を迎えている。ラ・フォル・ジュルネを契機にこうした風潮を改める動きが出てほしい。

 

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