マティアス・キルシュネライト メンデルスゾーン 厳格な変奏曲 Op.54

 マティアス・キルシュネライトは1963年、ヴェストファーレン生れ、アフリカ南部のナミビア育ちでドルトムント音楽大学でクレッチュマー-フィッシャ―に師事した後、クラウディオ・アラウ、ブルーノ・レオナルド・ゲルバー、オレグ・マイセンベルク、マレイ・ペライアに師事、ボンのドイツ音楽コンクール、チューリッヒのゲザ・アンダコンクール、シドニーのオーストラリア国際コンクールに入賞、1997年からロストック音楽大学教授となり、ハンブルクに居を構えている。

 キルシュネライトの演奏は一つ一つの変奏の性格を捉え、ヴィルトゥオジックな面、抒情的な面、ストイックな面のバランスを取りつつ、大きな世界を作り上げている。メンデルスゾーンの音楽は流麗さが目立っても、音楽としての統一性、精神性も豊かである。キルシュネライトはこれ見よがしに技巧をひけらかすようなことはない。

 メンデルスゾーンの変奏曲にはアンダンテと変奏曲、Op.82、Op.83がある。Op.82は変ホ長調、主題が厳格な変奏曲と似ている。Op.83は変ロ長調、こちらも雰囲気が似ている。ただ、どちらもあまり演奏されないことが残念である。この3曲が1841年に作曲されていることを考えると、メンデルスゾーンが重要視したのはOp.54だったことがわかる。メンデルスゾーンの自信作、古今の変奏曲の名作の一つとして今日までコンサート・レパートリーとして定着したことも頷けよう。

 一方、メンデルスゾーン生誕200年となった2009年以降、メンデルスゾーン再評価の動きも活発になっている。その中で、メンデルスゾーンのピアノ作品も再評価が進み、新たなメンデルスゾーン像が出て来るだろう。