ヴィルヘルム・ケンプ シューマン パピヨン Op.2

 ヴィルヘルム・バックハウス(1884-1969)と並ぶドイツの名匠、ヴィルヘルム・ケンプ(1895-1991)はシューマンの主要ピアノ作品をレコーディングした上、ブライトコップ・ウント・ヘルテルから出ているクラーラ・シューマンによるピアノ曲全集の校訂も行った。

 シューマン初期の名作の一つ、パピヨンはジャン・パウル「生意気盛り」によるとされる。シューマンの場合、文学、当時の社会への風刺も隠れていることに注意すべきである。しかし、文学、社会風刺があっても、あくまでも音楽としての客観性、統一性も重視していたことも見落としてはいけない。

 ケンプはシューマンの才気の裏に隠れているロマン性を見事に引き出している。全体に暖かい、パステル調の色彩が漂っている。幻想性豊かで、シューマンの世界に引き入れられてしまう。この色彩感が弟子のゲルハルト・オピッツに受け継がれている。オピッツがペーター・レーゼルとともに21世紀、ドイツ・ピアノ界の大御所になっていることも頷ける。第12曲の終止はさりげないようで、余韻を残している。味わい深い名演である。