ヴィーン・フィルハーモニーとナチズム

 NHKニュース9でヴィーン・フィルハーモニーとナチズムとの関係に関する資料が公開されたことを伝えたことを見ると、この名門オーケストラがナチズムに協力していた事実を明らかにした背景には、急増する難民・移民排斥への警鐘がある。

 これはオーストリア全体で、ナチスに協力したことを真摯に見つめ、反省することによって、最近ヨーロッパで急激に勢力を伸ばしている極右勢力を牽制することにある。日本でも極右団体「日本会議」、ヘイト・スピーチが政治・社会を左右するようになっている。こうした風潮に対する警鐘は必ず出る。

 強制収容所に送られ、殺害された楽員たちの生涯、オーケストラから追放となった楽員の生涯をたどると、ヴィーン・フィルハーモニー、音楽との深いかかわりが見える。その中、追放となってアメリカに渡り、アメリカで指揮者として活躍、第2次世界大戦終結後、オーケストラへの復帰を果たせずに世を去った楽員の生涯には、ナチズムと戦争が何をもたらしたかがわかる。楽員たちの中には、妻がユダヤ人だったため、離婚して楽員の地位を保つしかなかった人々も少なくなかった。

 これはドイツ、オーストリアのオーケストラ、オペラハウスの負の側面となった。しかし、日本はドイツと同盟を結んでも、決してナチズムのホロコーストにくみしなかった。リトアニア領事だった杉原千畝が多くのユダヤ人たちを救った話すらある。ドイツ、オーストリアでもユダヤ人をかくまった人々すらいる。良心から行動した人々も命がけだっただろう。

 ヴィーン・フィルハーモニーがこのような歴史を公表したことは、ベルリン・フィルハーモニーなどにも広がっていくだろう。何よりも「過去に盲目な者は未来に盲目である」こと、これは日本でも同じだろう。私たちも自分たちの歴史に真摯に向き合うことの大切さが求められている。