歌舞伎座4月公演 昼の部

 歌舞伎座4月公演は東西の花形役者たちの豪華共演による、見所満載の内容である。昼の部は「醍醐の花見」、「伊勢音頭恋寝刃」、「熊谷陣屋」の3本であった。

 「醍醐の花見」は初演で、1598年春、豊臣秀吉最後の宴となった花見を取り上げている。淀殿、松の丸殿の杯争い、秀吉に切腹を命じられた(史実ではそうでなく、秀次自ら死を選んだとされる)甥秀次の霊が現れ、豊臣家の行く末を暗示するかのような場面の後、花見を繰り広げていく。この花見の5か月後、豊臣秀吉は老衰のため、63歳の生涯を閉じ、1600年、関ケ原の戦いの後、徳川家康の天下となって、1603年、江戸幕府が成立する。中村鴈次郎、中村扇雀、中村壱

太郎、市川笑也、市川笑三郎、尾上松也、市川右団次が秀吉最後の宴を見事に演じた。

 「伊勢音頭恋寝刃」は伊勢の遊郭で医者が引き起こした殺人事件、蜂須賀家の御家騒動を基にした作品で中村隼人、中村梅枝、片岡萬次郎が素晴らしい舞台を見せた。市川染五郎が迫真の演技で見所を盛り上げ、尾上松也が見事な助っ人ぶりを演じ、市川猿之助の悪女ぶりも見事だった。

 「熊谷陣屋」は松本幸四郎の直実が絶品である。幕切れ、出家した後、立三味線が響く中、花道を下がっていく余韻たっぷりの演技は素晴らしい。「仮名手本忠臣蔵」第1部の幕切れもこの場面同様、立三味線の中、大石由良之助が立ち去っていく。こういう場面に相応しい存在だろう。市川猿之助の味わい深い演技、市川高麗蔵の激しい感情、市川染五郎も見事だった。もう一人、弥陀六を演じた市川左団次の見事な芸が華を添えた。名役者あっての舞台。それこそ、開゛期の醍醐味ではなかろうか。

 「一谷嫩軍記」は歌舞伎座では1957年3月、1967年2月、1996年2月、国立劇場では1972年4月、2012年3月に通し上演がある。「熊谷陣屋」のみの上演が圧倒的に多い。「一谷嫩軍記」はぜひ、通し上演してほしい演目である。回数を増やしてほしい。