アンジェラ・ヒューイット ベートーヴェン ピアノソナタ Op.14-1 Op.49-1 Op.49-2 Op.31-1 Op.81a「告別」

 カナダの女流ピアニスト、アンジェラ・ヒューイットによるベートーヴェン、ピアノソナタ全集第6巻は第9番、Op.14-1、第19番、Op.49-1、第20番、Op.49-2、第16番、Op.31-1、第26番、Op.81a「告別」の5曲である。

 Op.14-1。第1楽章は清々しさ、抒情性が調和した世界を描いている。第2楽章の深々と歌われる主部、内面から訴えかけてくる。トリオの豊かな歌も素晴らしい。主部に戻り、コーダの余韻が聴きもの。第3楽章は内面から湧き上がる歌、推進力が一体となっている。Op.49-1。第1楽章はじっくり歌いあげた演奏。第2楽章は喜びに満ちた主部、情熱的な経過句から抒情的な中間部、主部、中間部、コーダに至る。この頃のベートーヴェンが伝わる。Op.49-2。第1楽章は

音楽が清らかに流れ、一気に進んでいく。第2楽章。優雅にもじっくり歌いあげていくロンド風メヌエットである。そこにはヒューイット自身によるヴァリアントもあり、聴き応えがある。

 Op.31-1。第1楽章。第1主題での調性面での試み、力感、抒情性を見事に捉えている。中期へと進むベートーヴェンの実験性が現れている。第2主題の歌心も素晴らしい。展開部のドラマトゥルギーも十分てある。第2楽章。明るさの中に秘めた豊かな抒情性が素晴らしい。第3楽章。楽し気、かつ喜びに満ちたロンドがスケール豊かに展開していく。歌心も十分である。コーダはドラマティックでありながらも、静かに終わっていく。その迫力が見事である。

 Op.81a「告別」1809年、ナポレオンがヴィーンに侵攻、オーストリア帝室はヴィーンを逃れていく。帝室でベートーヴェンを後援、音楽の才能に溢れ、弟子となって作品を残し、大司教となったルドルフ大公との別れ、占領下のヴィーン、ヴィーンへ戻って来たルドルフ大公との再会を描きだした。第1楽章の別れ、再会への希望、永遠の別れになるかもしれない思いが伝わる。第2楽章では占領下のヴィーンのわびしい光景を描き、第3楽章へと続く。再会の喜びの高まり、つかの間の辛い思い出、それを吹き飛ばすかのような喜び、互いに目を見つめ合い、喜び合う風景が目に浮かぶ。そんな感情を描きだした演奏である。

 ヒューイットのベートーヴェン、ソナタ全集も半ばまで来た。次が楽しみである。