カール・ベーム モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 K.364

 カール・ベームのモーツァルトの貴重な遺産の一つ、協奏交響曲、K.364。パリで母を失ったモーツァルトは、父レオポルトの説得によりザルツブルクに帰った。パリでの成果の一つとしてザルツブルクで書き上げたこの作品は、20代のモーツァルトの自信が伺える。バロック期の合奏協奏曲様式を引き継いだ協奏交響曲は、近代協奏曲への発展過程とみるべきだろう。

 ヴァイオリンは当時のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサート・マスター、トーマス・ブランディスで先頃亡くなったという。ヴィオラは首席のジュスト・カッポーネで、当時のベルリン・フィルハーモニーがヘルベルト・フォン・カラヤンのもと、優れた奏者を集めていたかがわかる。

 第1楽章は伸びやか、かつ歌心に溢れ、オーケストラ、ソリストが一体となってモーツァルトの音楽を奏でている。第2楽章は沈痛な歌が響く。母を失った悲しみが伝わる。モーツァルトの歌の世界の深さ、広がりを感じる。第3楽章はきびきびした動き、ソリストたちの歌が心地よく響く。モーツァルトらしい明るさ、ユーモアに満ちている。

 その後、モーツァルトはミュンヒェンで、オペラ「イドメネオ」を作曲、上演後、ザルツブルク大司教、ヒェロニュムス・フォン・コロレド侯爵と大喧嘩の末、ヴィーンへ移り住むこととなる。この作品での試みがヴィーンでのピアノ協奏曲創作につながっていることを思うと、一つの集大成と言えよう。