佐野智子 高田三郎 祈りの音楽

 日本を代表する作曲家の一人、高田三郎(1913-2000)の主要作品、典礼聖歌、合唱組曲「水のいのち」、「心の四季」を取り上げた研究書として重要な一冊である。著者佐野智子は教職につく傍ら、高田作品の研究を志し、兵庫教育大学大学院、大阪大学大学院で高田作品の研究に打ち込んだ。佐野も在職中、高田作品を部活動でも取り上げ、合唱団でも歌っていた。

 高田の自伝「回想の記」は日本音楽舞踊会議の機関誌「音楽の世界」でも連載され、高田の死の直前まで続き、ローマ・カトリック修道院関係の読者を多く集めた。これは編集長だった助川敏弥氏の業績の一つでもあった。高田も日本音楽舞踊会議の新年会に出席している。

 本書の構成は高田三郎の生涯・音楽の概説、高田のローマ・カトリック信仰から生まれた典礼聖歌、「水のいのち」、「心の四季」の分析、高田の生涯の年譜、作品全体の資料、典礼聖歌に関する資料、作品の演奏活動記録となっている。

典礼聖歌では高田が日本語を生かしつつもグレゴリオ聖歌のソレムとの融合を図ったこと、「水のいのち」では高野喜久雄の詩集に出会い、作曲に当たって改作を要請、今の形になったことがわかる。「心の四季」でも吉野弘にも改作を求め、素晴らしい作品に仕上げている。詩人に改作を求めた上で入念、かつ言葉の重み、意味を掘り下げた作品に仕上げ、今日歌い継がれる作品となった過程が伝わる。

 演奏活動編では高田作品を取り上げて来た合唱団関係者の言葉から、高田作品への思いが読み取れる。高田作品が多くの人々に歌い継がれた証でもあろう。

 ローマ・カトリック信者として、クリスチャン・ネーム、ヨゼフ・ダヴィドを名のり、自らの信仰から生まれ、日本語を大切にした高田三郎の集大成の典礼聖歌、代表作「水のいのち」、「心の四季」を取り上げたとはいえ、高田作品を理解するためには重要な一冊としての価値がある。

 

(音楽之友社 3500円+税)