豊増昇 バッハ ゴールドベルク変奏曲 BWV.988

 日本を代表し、バッハ、ベートーヴェンの権威と謳われ、ドイツ(旧東西)はもとより、オーストリア、イギリスでもコンサートを行った豊増昇(1912-1975)が遺したバッハ、ゴールドベルク変奏曲は1965年、旧東ドイツの放送局による録音で、デジタル・リマスタリングにより鮮明なものとなっている。1964年、ライプツィッヒでのバッハ・コンクール審査員に招かれ、ハレ、ドレースデン、フランクフルト・アン・デア・オーデル、ベルリンでコンサート、オーケストラとの共演を行っている。その折のものだろう。バッハ・コンクールへは1968年、1972年にも招聘されている。ちなみに1973年、旧東ドイツとの国交が樹立され、音楽家たちの来日も増加している。

 全体を聴くと繰り返しがなく、一気に流れていく。人間的な温かみも十分で、歌心、深さも十分で、味わい深いものとなっている。短調による3つの変奏の彫りの深さ、歌心の深さは聴きものである。日本人によるレコーティングは神西敦子によるものが最初となっているが、この豊増のものが発見され、CD化されたことは大きい。

 世界的な大指揮者になった小澤征爾は豊増に師事していた。小澤がけがのため、ピアノを断念せざるを得なくなった時、豊増は指揮者になることを勧めたという。門下には同じくバッハ、ベートーヴェンの権威となった園田高弘がいる。日本におけるベートーヴェン受容史上、豊増と園田は重要な存在であり、その意義を評価すべき時期ではなかろうか。

 

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コメント: 1
  • #1

    石崎です❗ (月曜日, 06 2月 2017 22:19)

    是非とも聴いてみたいですね。(^∇^)�
    小澤さんのエピソードは有名ですが、その師匠のことは全く知りませんでしたです(^∇^)