ヴォルフガング・シャウフラー マーラーを語る 名指揮者29人へのインタビュー

 オーストリアの出版社、ウニヴァーサル社国際宣伝部長を務めるヴォルフガング・シャウフラーが現代の名指揮者29人にグスタフ・マーラー(1860-1911)の生涯、交響曲に関するインタビューを行ったものを纏めている。その中にはクラウディオ・アバド、ロリン・マゼール、ピエール・ブーレーズといった今は亡き名指揮者たちも含まれている。

 多くの指揮者たちに共通することはブルーノ・ヴァルター、オットー・クレンペラー、レナード・バーンスタインに言及している。ことに、バーンスタインに関して、ミヒャエル・ギーレンは「マーラーを俗悪にした」と厳しく批判する。また、ヴァレリー・ゲルギエフ、マリス・ヤンソンスはロシアでのマーラー受容が遅かったことを指摘している。マイケル・ティルソン・トーマス、アラン・ギルバートにはバーンスタインの影響が強かったりする。バーンスタインには功罪両面あっても、その影響力の絶大さは誰しも認めている。

 バーンスタインこそ、全身全霊でマーラーを受け止め、表現したこと、マーラーの作品受容に大いに貢献し、マーラーの音楽を広めていったことは誰しも評価している。また、ヘルベルト・フォン・カラヤンがマーラーに取り組みだしたことも重要だろう。また、ギルバートは、マーラーがニューヨークでは投げやりだったこと、人生に疲れていたことも見て取っていた。その頃、マーラーは妻アルマとの関係が悪化し、アルマが建築家ヴァルター・グロピウス(1883-1969)と恋愛関係に陥ったことが大きい。その面も踏まえている。

 どの指揮者たちもマーラーの音楽、生涯に対して正面から向き合い、自らのマーラー観を語る。そこから、私たちもわからなかった新たなマーラー像が垣間見えてくる。

 天崎浩二の訳は、専門家などのチェックを経て読み応えある訳に仕上げている。

 

(音楽の友社 3100円+税)