萩谷由喜子 クロイツァーの肖像 日本の音楽界を育てたピアニスト

 レオ・シロタ(1885-1965)と共に日本の音楽界発展に貢献したピアニスト、レオニード・クロイツァー(1884-1953)の評伝としては山本尚志の評伝に次ぐ。萩谷由喜子はクロイツァーの生涯を丹念に追っている。ただ、参考文献を見ると、当時の音楽雑誌(音楽世界、音楽評論、月刊「楽譜」など)、新聞記事などを参照すべきではなかったか。

 単行本を見ると、凡そのところは問題ない。門下生の回想録を見ると、東京芸術大学関係、国立音楽大学関係に偏っているきらいがある。武蔵野音楽大学でも的場好美、片山泰子など、クロイツァーの門下生だった優れた教授もいた。私事で申し訳ないが私の恩師、西田幸子先生もクロイツァーの門下生だった。そういった意味でいくつか指摘させていただいた面があることをお許しいただきたい。

 今まで、日本ではショパン演奏家としてクロイツァーのことが話題に上ることが多かった。ベートーヴェン演奏家としてのクロイツァーは渡辺裕「西洋音楽 演奏史論序説」(春秋社)で取り上げている。萩谷もベートーヴェン演奏家としてのクロイツァーを認めている。ベートーヴェン演奏家としてのクロイツァーの研究を進め、「ヴァルトシュタイン」、

「告別」について、日本音楽学会て発表している。今後、「熱情」、第32番、Op.111、エロイカ変奏曲、Op.35も取り上げていくことにしている。

 萩谷の評伝も山本のもの共にクロイツァーを知るものには貴重な文献となるだろう。

 

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