歌舞伎座6月公演 義経千本桜 第3部

 歌舞伎座6月公演、3部制による「義経千本桜」第3部、「狐忠信」は4代目市川猿之助の素晴らしい舞台に尽きる。歌舞伎におけるケレン、宙乗りといったスペクタクルが観客たちを魅了した。

 先代猿之助、現猿翁は現代の歌舞伎上演のあり方におけるの3要素を「3S(ストーリー・スピード・スペクタクル)」と定め、古典もののストーリーを明確にした上でセリフ回しの速度を上げ、きびきびしたものとした。さらに歌舞伎におけるケレンを生かし、スペクタクルとして宙乗りを最大限に生かしている。これが1992年のバイエルン国立歌劇場来日公演、リヒャルト・シュトラウス「影のない女」の演出で最大限の効果を上げ、このオペラの原点をくっきりと打ち出すことに成功した。

 「道行初音旅」は市川染五郎との息の合った踊りが素晴らしい。市川猿弥の逸見権太がコミカルな要素を醸し出し、花を添えた。「川連方眼館」では本物の佐藤忠信との演じ分けが見事で、義経・靜御前の前で本性を現し、親の形見の鼓をもらい受けて山へ帰っていく場面での宙乗りには観客たちが沸き上がった。市川笑也の静御前、市川門之助の義経、尾上松也の駿河次郎、坂東巳之助の亀井六郎も見事な演技を見せた。

 今回の3部制上演は「鳥居前」がなかったことは問題だった。「碇知盛」、「いがみの権太」、「狐忠信」に分け、わかりやすいものにしたことは評価してもよい。外国人向けにはよくとも、日本人にとってはどうか。外国人観光客のことを考えるならば、英語版・中国語版・ハングル版などを作った方が合理的ではなかろうか。