第63回 NHKニューイヤーオペラコンサート


 新春恒例のNHKニューイヤーオペラコンサートも63回目を数えた。日本オペラ界を代表する歌手たちが登場、1年が始まる。今回は指揮にアンドレア・バッティストーニ、ハープのグザヴィエ・ド・メストレを迎えた。

 今年はイタリア・オペラ中心のプログラムで、どの歌手たちからも力のこもった、素晴らしい歌が聴かれた。特に聴きものはプッチーニ「蝶々夫人」から「桜の花をゆすぶって」、「トゥーランドット」から「お聞き下さい」「泣くな、リュー」、第1幕フィナーレ、ヴェルディ「ドン・カルロ」から「われらの胸に友情を」、「シモン・ボッカネグラ」から「悲しい胸の思いは」、「オテロ」から「アヴェ・マリア」、マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」

から「主はよみがえられた」であった。

 「蝶々夫人」ではピンカートンのため、部屋に花を蒔く蝶々さんとスズキの思いが伝わる。「トゥーランドット」はトゥーランドットに求婚するカラフ、リューの思いがぶつかる。「ドン・カルロ」ではスペイン王室の三角関係に悩む王子カルロ、親友でフランドル解放を進めるロドリーゴ公爵の友情が歌われる。「シモン・ボッカネグラ」はジェノバの政争と和解に揺れるフィエスコの心情を歌い、「オテロ」はヤーゴの策略によって命を落とすデスデモーナの清純な祈りが素晴らしい。「カヴァレリア・ルスティカーナ」ではキリスト復活を祝福しながらも、悲劇を予感するような雰囲気が伝わった。アリアのみならず、重唱、場面からの抜粋がかえって、オペラそのものが伝わった。

 最後はヴェルディ「椿姫」から「乾杯の歌」でお開きとなった。2020年の日本のオペラ界はどうなるか。楽しみになって来た。